『【血の人形】を欲してはいけません』
[お勧め度:5]
桜庭さんの作品を読むのは「推定少女」以来の2作目ですが、
ライトノベル作家の直木賞作品に興味を引かれて読みました。
第一印象は、無機質で軽快だった文体が、どんよりとした物に変化しているのに驚きました。
それは題材として近親相姦というタブー視されるの物を扱っているからだけでなく、
桜庭さんが描く、花と淳悟の会話のネットリ感、血の臭いがする二人の絡みの表現から感じました。
物語は、二人の別れから出会いを遡って綴られて行きます。
現代から遡っていくに当たって、登場人物の心情変化を饒舌に表現するのではなく、
一瞬の独白で描くことで、長い年月の中で心が蝕まれていくのを感じとれました。
また、多くを語らずとも、血の繋がりを持った二人の前では、出会った時から、父と娘であり、
男と女だというのを受け入れてしまう桜庭さんの筆力に飲み込まれました。
多くの人は読後に、不快感、嫌悪感を抱く作品だと思いますし、
私も最初は花と淳悟の世界を不快に思っていましたが、
読み進むうちに私自身をも不快に感じていました。
それは、私には踏み越えることができない、あちらの世界に対して、
「覗いて見たい」、「踏み込んでみたい」と惹かれてゆく私自身がいたからです。
「血の絆」があれば全てが許されるのかとも思う不条理な話ですが、出会えて良かった作品です。