『ぼくがかつてぼくだったことの「証」』
[お勧め度:4]
「己の無垢なる〈分身〉との邂逅と別離」をテーマにしているという
意味では、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と対をなす作品。
ただ、『砂糖菓子』が明確な事件が起こるミステリ的要素を含んだ作品であるのに対し、
本作は、一種のマジックリアリズム的手法で思春期の焦燥や不安が描かれています。
そうしたファンタジックな作品空間が選ばれることで、少女の淡く、
儚い心情が、より切実に読者の胸に迫ってくるように感じました。
ところで、この角川文庫版では未公開エンディング2本を含む、
三通りの結末が収録されています。以下、その内訳を記します。
・「Ending1 放浪」…最初に書かれたもの
・「Ending3 安全装置」…編集部の要請で、ハッピーエンドに書き換えたもの
・「Ending2 戦場」…3を短くと要請され、書き換えたもの
ファミ通文庫版では、2がエンディングとして使われています。
三通りのエンディングを、それぞれ単独で娯しむことも可能ですが、
やはり、すべてを一つの物語として受け取るべきなのだと思います。
謎の美少女・白雪の正体は結局なんだったのか、「電脳戦士」はその後どうなったのか……。
本作は、そのようなことへの「答え」を求める物語ではありません。
ある人にとっては、現在進行形の、また、ある人にとってはるか昔に通り
過ぎた、思春期という疾風怒濤の季節を生きる自分と出逢う小説なのです。