『かつては自分も撃っていたはずなのに。』
[お勧め度:4]
鳥取県の田舎町に住む少女ふたりの、1ヶ月間の物語です。
彼女たちは中学2年生。
リアリストのなぎさは、社会と戦うために感情を押し殺し、実弾を求めて生きている。
父親から虐待されている藻屑は、傷つけられながらも愛している父親と、誰も味方がいない自分を守るために、嘘で塗り固めた砂糖菓子の弾丸を撃ち続けている。
そんななぎさと藻屑に芽生えた奇妙な友情と、彼女らを取り巻く大人や家族、同級生たちとの日常が、桜庭さんらしい瑞々しい筆致で展開していきます。
そして、藻屑の死で、物語は幕を閉じます。
(もっとも、藻屑の死そのものは冒頭でネタバレされるのですが)
藻屑が殺される前に、なぎさは藻屑と一緒に逃げ出そうとします。
箱庭のような街から。
ふたりでうまく逃げ出せていたら、結末はどうなっただろう。
きっと、遅かれ早かれ、藻屑はやっぱり藻屑になったのでしょうね。
だって、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないのですから・・・。
今日も子どもたちは、声なき叫び声を発しながら、砂糖菓子の弾丸を撃っています。
かつては自分も撃っていたはずなのに、大人たちはそれに気がつきません。
とてもとても哀しい現実です。
この作品は、いつの間にか大人になっていた私に、あらためてそれを気付かせてくれました。
救いがあるのは、藻屑の撃った砂糖菓子の弾丸が、なぎさや友彦の心は撃ちぬけたことかな。
惜しむらくは、設定がとても雑なこと。
これは編集者の責任ですね。
それぞれのキャラが魅力的なだけに、そこだけちょっと残念な気がして、★4つ。